New Zealand Coaching SAGA, Wales’ dispute amid 6 nations, All Blacks exodus….

Sky Sports NZのBreakdownなる番組はSuper Rugby Pacificのプレシーズンマッチからその開幕に合わせて今年の放送を再開したらしい。その第3回目、3月5日の放送分は冒頭からJohn Kirwanが巨体を揺るがして演説をぶった。この番組ではすっかりおもろいおっさんキャラ(私にはそのように見える)、かつて日本代表を常に深刻な表情でリードした印象とは全く違うのだけれど、今回ばかりはどうも真剣らしい(時折彼の口から漏れる日本批判は措く)。

というのも、番組の(前半の)主題はAll Blacksの次期ヘッドコーチの問題。どうしてこの時期?ワールドカップは今年の秋なのだ、ワールドカップ後のヘッドコーチの交代なんて「祭りの後post-festum」にこそ相応しいはず。

Kirwanの批判もそこにある。どうしてこの時期にこんな問題を持ち出すのか!選手にとってはdistractionでしかないではないか、と。批判の矛先は、New Zealand Rugby Board(NZR)である。

3月1日、NZR Boardのチェア、Patsy Reddy氏はかの組織が次期All Blacksヘッドコーチの選出の協議をはじめ、4‐6週間後にその結果を発表すると記者会見で述べたのだ。

どうしてこの時期に、敢えて選手らのモチベーションを挫くようなことを、NZR Boardはしたのか?

そこでちょっと勘ぐってみようと思った。まったくの私見、何者でもないただのラグビー愛好家、Rugby Amateur(あまた―、って呼んでほしい)の私見、勘ぐりである。

けれど勘ぐりにも一理あるかもしれない。ここにはNZRの抱える、あるいは、世界のUnionの抱える問題があり、その問題を危惧するあまりに、NZRは敢えてこの時期にヘッドコーチの交代を発表することを決めたのではないかと、私はにらんでいるのだ。

Wales

それを直截に指摘する前に、ちょっとだけ補助線を引いておこう。舞台は北半球に移る。ラグビーファンにとってこの時期の慰めは、SuperRugbyの開幕と同時に、北半球の6 nations Rugbyである。

今年はどのチームが優勝するか?残念ながら、今年の優勝チームはRound 2で決まってしまった(Ireland対Franceの二強対決を制したIrelandである。地元だったし、FranceはRound 1でちょっと愚図ったのが響いたか?)のだけれど、ここで取り上げるのはそのことではない。

Round 3でEnglandを地元にむかえたWalesのことである。戦前、このゲームが実際に行われるかどうか危ぶまれている云々、そんな記事がラグビー関連ニュース欄を賑わした。

Wales選手会(Welsh Rugby Players’ Association)が試合をボイコットするかもしれないという。

いわば「実存」の問題である、ギャラの問題といってもいいけれど、お金だけではないだろう、福利環境やセカンドキャリアでの可能性など、そんなことを見据えての選手の人生、その今、それを「実存」とよんでおこう。「実存」の問題、選手生命の短いラグビーにあっては当然のことである。Walesのユニオンには、かの国の代表に選ばれるためには60キャップを得るまでドメスティックのチームに所属し続けなければならないというルールがあるのだそう(Walesの4チームはUnited Rugby Championshipが舞台)。ユニオンはドメスティックなラグビーチームやラグビー環境を持続可能な状態にキープしたい。実際このルールは、まだ代表経験の浅い選手、キャップ数の少ない選手を海外からWales国内に呼び戻す効果があったのだそう。しかし、選手は、才能のある選手ほど、もっと若いうちにもっと金銭的な条件の良い=「実存的な条件の良い」チームで、すなわち、イングランドプレミアやフランスで稼ぎたいだろう。ただでさえかの国では、選手のギャラは削られる傾向にあるのだそう。選手たちはそのことで反旗を揚げたわけだ。結局ユニオンが折れて60キャップを25キャップに変更し、選手会と合意し、Englandとの試合は行われたのだけれど(・・・・依然くすぶっているという記事も見える)。

All Blacks Exodus

ニュージーランドのユニオンNZRにもAll Blacks選出の条件がある。その年のセレクションにかかるには、ドメスティックのチーム、つまり、SuperRugbyの5チームのいずれかに所属していなければならないということ(もっと厳密な規定があるのかもしれないけれど、私の理解はこの程度)。

たとえば、昨年はサントリーに所属していたためDamian McKensieがAll Blacksには選ばれなかった(Maori All Blacksには選ばれていたような・・・・)ように。

今年はワールドカップの年だから、All Blacksはみなドメスティックチームに所属している。

しかしすでにワールドカップ後のニュースが喧しいではないか。

来季、ワールドカップ後、日本チームへの移籍を表明しているのは、Ardie Savier、Beauden BarrettとAaron Smith、Shannon Frizell、Brodie Retalickも・・・・そして極めつけがRiche Mo’ungaの移籍表明ではなかったか、しかも彼の場合には3年契約だとか・・・・

そんなわけで、NZRは慌てているだろう。このままだと来年以降、人気選手がニュージーランドからいなくなってしまう・・・・どうしよう・・・・そこで!

ヘッドコーチの交代でBlacksの魅力を刷新しようとしているのではないか!?

というのも、名前が挙がっている「2.5名」のうち、その筆頭がCrusadersのヘッドコーチを2017 年以来務めている、Scott Robertson氏だからだ(Razorなる愛称なのだそう。それを知らなかったものだから、Breakdownで出演者が時折Razorと言うのが私にはわからなかった)。優勝するたびに試合後ブレークダンスを披露するという人気者、なにより華がある。きっと選手の信頼も厚いのだろう(・・・・もちろん私が知る由もないことである)。現ヘッドコーチのIan Foster氏(愛称はFossie)は就任以来戦績は芳しくなく、ちょっと地味な印象(かといってその前のSteve Hansen氏に華があったかと言えば、そうでもないのだけれど、とにかくチームは強かった)。

ひょっとしてNZRは、Scottさんの人気にあやかって人材流出を抑えようとしている!・・・・のではないかと・・・・勘ぐっているわけだ(・・・・我ながら説得力のない勘ぐりなのだが、勘ぐりに説得力は要らない)。

ちなみに、「2.5人」と書いたのは、三人候補者がいるうちの二人を評価してあとの一人を評価しないという意味ではない。最後の候補者はそのキャリアからして候補者と目さざるを得ないけれど決して選ばれることはないだろうと言う意味である。

つまり、あとの一人が我が日本のヘッドコーチであるJamie Joseph氏で、最後の候補者が、かつてIrelandを率いたJoe schmidt氏。私は是非この最後の人がAll Blacksのヘッドコーチになることを期待している者なのだけれど、残念ながらその見込みはほとんどないだろう。